「誰も傷つけない」似顔絵

私が自分の似顔絵の一番の特徴だと思っているのは、「やわらかい雰囲気」でも「優しい色づかい」でもなく、「誰も傷つけない」です。特徴としてはイマイチというか消極的にも思えるのですが、これは私の理想とする似顔絵にとって非常に大切なことです。

誇張する似顔絵は日本人向きでないと思う

日本人は自分の見た目の満足度が26%という統計があるそうです。これは世界22カ国を対象とした調査の中で最下位とのことで、日本人の4人に3人は、外見に何かしらのコンプレックスを持っているということになります。お顔の特徴を誇張する、ユーモアのあふれた似顔絵を「カリカチュア」と言いますが、そういった似顔絵は、あまり日本人向きでないのでは、と思います。

似顔絵がトラウマになっている方たち

子供の頃、家族で描いてもらった似顔絵。親御さんは「記念になるから」という思いだったはずですが、子供心にコンプレックスを抱いていた部分を強調されたその似顔絵を見て、とてもショックを受け、それからずっと似顔絵がトラウマだった、という話を色んな方から聞いてきました。面白い系の似顔絵は、ご本人が「面白いから描いてもらおう!」というのはもちろん良いのですが、プレゼントだったり、他の方と一緒に描いてもらう場合、誰かがこっそり傷ついていることがあります。
私はお子様の似顔絵を描くことが多いのですが、お子様にはなるべく自分を好きでいてもらいたいし、似顔絵も、絵を描くことも、嫌いになって欲しくありません。
何より、ハッピーな気持ちになってもらうはずの似顔絵で、悲しい思いをする人を作っては本末転倒です。
そのため、私は「すべての方に喜んでいただける似顔絵」の大前提として、「誰も傷つけない」をモットーにしています。

似顔絵は「私が感じたその人だけの美しさ」を描くもの

私自身、幼少期から色んなコンプレックスがありました。幼少期からアトピーや喘息持ちで、良くなったり悪くなったりを繰り返していたことも原因の一つだと思います。(今は元気です。)
人を描くことはずっと好きでしたが、自分自身の姿を肯定することは、なかなかできませんでした。
でも大学生の頃から始めた似顔絵のお仕事で、たくさんの人のお顔を描いているうちに、「人にはそれぞれの美しさがある」ということに気づきました。
美人だとか、コンプレックスがあるだとかは関係なく、誰もがそれぞれ、世界にひとつだけの美しさを持っていると思います。
つまり、私にとって似顔絵は「私が感じたその人だけの美しさを描く」ものなのです。

「私は私に生まれてきて良かったな」と感じて欲しい。

私は似顔絵で「その人だけの美しさ」を描き、ひいてはその人に「私は私に生まれてきて良かったな」と感じてもらえたらと思っています。
ちょっと大げさに、そしておこがましく聞こえるかもしれませんが、本気でそう考えています。
そのためにこれからもっと上達したいですし、もっといろんな場面に出張似顔絵師として参加させていただきたいです。
また、自分でも似顔絵イベントを企画したいとも考えています。
これからもがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします!

2017.7.14
原明 あさの(HARAMYO Asano)
アートの綿毛代表/似顔絵師/イラストレーター